京都を代表するお菓子といえば八ッ橋は外せません。
歴史はとても古く、誕生したのは元禄二年(1689)と言われています。
ちょうどその年が、八ッ橋の老舗として有名な聖護院八ッ橋総本店や本家西尾八ッ橋の創業年とされているんです。
聖護院には本家西尾八ッ橋の本店や聖護院八ッ橋総本店の本店など、たくさんの八ッ橋屋さんが並んでいます。
ところで、よく混同されるんですが八ッ橋と生八ッ橋は別物なんですよ。
どちらも米粉を使ったお菓子なんですが、八ッ橋はおせんべいのような焼き菓子。
一方、生八ッ橋は柔らかな食感を楽しむ生菓子です。
このページでは八ッ橋や生八ッ橋の歴史から、それぞれの特徴を紹介していきますね。
八ッ橋の歴史
八ッ橋の歴史は元禄二年(1689)と言われています。
なぜ断定しないのか?
それは多分だから。
こういう歴史の古いものはその起源がいくつもあるものも多くて、はっきりとコレだ!と言い切れないものなのです。
実際に八ッ橋の起源も諸説あって、この2つの説が有名。
- 琴の名手・八橋検校を偲んで作られた
- 伊勢物語に感銘を受けて作られた
江戸時代に創業したこの3つのお店で、八ッ橋の起源を調べてみるとこうなります。
店名 | 起源 |
---|---|
聖護院八ッ橋総本店 | 八橋検校 |
本家西尾八ッ橋 | 伊勢物語 |
井筒八ッ橋本舗 | 八橋検校 |
それでは八橋検校と伊勢物語を起源とする歴史についても見ていきましょう。
八橋検校を偲んで作られた八ッ橋
聖護院八ッ橋総本店と井筒八ッ橋本舗の八ッ橋は八橋検校を偲んで作られたもの。
まずは元禄二年(1689)創業の聖護院八ッ橋総本店から。
聖護院八ッ橋総本店のWebサイトにはこのような記載があります。
検校没後四年後の元禄二年、琴に似せた干菓子を「八ッ橋」と名付け、黒谷参道にあたる聖護院の森の茶店にて、販売し始めました。
聖護院八ッ橋についてより
Webサイトによると八ッ橋の誕生は元禄二年(1689)としっかりと明記されていました。
聖護院の森の茶店は、ちょうど現在の聖護院八ッ橋総本店の本店のある場所だそうですよ。
続いて文化二年創業(1805)の井筒八ッ橋本舗を見てみましょう。
井筒八ッ橋本舗のWebサイトにはこのような記載がありました。
当時祇園の茶店で人気を博していた堅焼き煎餅が、箏曲の祖・八橋検校の遺徳を継承した琴姿の「八ッ橋」です。これこそが唯一「八橋検校」の由来をもつ「井筒八ッ橋」でございます。
創業文化二年 井筒八ッ橋本舗 | 井筒八ッ橋の歴史より
井筒八ッ橋本舗では「井筒八ッ橋こそが八橋検校が由来の唯一の八ッ橋」と断言していますね。
余談ですが、この2社は八ッ橋の起源について裁判沙汰にもなっているんです。
これは井筒八ッ橋本舗が聖護院八ッ橋総本店を相手に起こしたもので、「元禄二年(1689)創業をうたうのは事実と異なる」という訴えです。
京都地裁の判決が2020年6月10日に出て、井筒八ッ橋本舗の請求を棄却しました。
ただ、井筒八ッ橋本舗は控訴を検討しているとして、まだまだ争いは続きそうな予感ですが…
八ツ橋訴訟、「井筒」敗訴 「聖護院」の創業年表示で (写真=共同) :日本経済新聞
とにかく、同じ八橋検校を由来とする聖護院八ッ橋総本店と井筒八ッ橋本舗でも、その詳しい起源は異なるようですね。
伊勢物語を起源とする八ッ橋
一方、伊勢物語を八ッ橋の起源とするのは、聖護院八ッ橋総本店と同じく元禄二年(1689)創業の本家西尾八ッ橋です。
伊勢物語の第九段「東下り」の舞台は、「三河の国八橋」です。
三河の国八ッ橋は現在の愛知県知立市(ちりゅうし)八橋町。
ここは川がくもの足のように分かれて流れていて、八つの橋がかかっていたんだそう。
だからこの場所は八橋と呼ばれていたんです。
そしてこの場所はカキツバタがとてもきれいに咲いていたので、在原業平は「かきつばた」を句の頭につけて歌を詠みました。
唐衣 着つつなれにし つましあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ
伊勢物語
妻を都に残したまま、こんなはるばる遠くまで来てしまった。
そして、大泣きして糒(ほしいい・乾燥させたご飯で昔の携帯食)に涙をこぼした。
そんな切ない感じの歌なんです。
今は八橋かきつばた園があって、みごとなカキツバタが楽しめますよ。
ちょっと話が長くなりましたが、本家西尾八ッ橋の八ッ橋はこの川にかかっている橋に見立ててお菓子を作ったんだそう。
今でも本家西尾八ッ橋では、知立市のかきつばたまつりのための生八ッ橋を手がけています。
京都ではなく、知立市でしか食べられないレアすぎる生八ッ橋「かきつの香り」は一度でいいから食べてみたいです!
八つ橋だより| かきつばたまつり限定あんなま「かきつの香り」と「京銘菓 八ッ橋」 – 本家西尾八ッ橋
それがもう一つの八ッ橋の由来なんです。
当時の八ッ橋はまっすぐな焼き菓子だったそうで、今のように丸みを帯びた形になったのは明治時代。
携帯食として割れなくくするために、丸みを帯びた形になったんですよ。
京都にはいくつ八ッ橋のお店があるのか?
京都を代表するお菓子である八ッ橋。
京都にはいったいどれくらいの八ッ橋を作るお店があるのでしょう?
京都市の京都八ツ橋商工業協同組合に加盟しているお店を挙げてみました。
- (株)聖護院八ツ橋総本店
- (株)都
- (有)平安八ツ橋本舗
- 本家八ツ橋西尾(株)
- (株)八ツ橋屋西尾為忠商店
- (株)東山八ツ橋本舗
- (有)御殿八ツ橋本舗
- (株)本家八ツ橋
- (株)井筒八ッ橋本舗
- (株)京栄堂
- 御車八ツ橋本舗
- 聖光堂八ツ橋総本舗
- (株)白心堂
- (株) 美十
なんとその数は14!こんなに八ッ橋のお店があったんですね。
そしてここには加盟していないお店もあるので、八ッ橋を手がけるお店はもっと多いんです。
もちろん京都だけじゃなくて、大阪など他府県でも八ッ橋を作っているお店は存在しますよ。
これだけたくさんのお店があるわけですが、とりわけ規模が大きくて有名なのはこの4つでしょう。
店名 | 代表する商品 |
---|---|
(株)聖護院八ツ橋総本店 | 聖(ひじり) |
本家八ツ橋西尾(株) | あんなま |
(株)井筒八ッ橋本舗 | 夕子 |
(株) 美十 | おたべ |
この4つは京都の駅や観光地、百貨店などにもたくさんお店があるので目にする機会もとても多いですよ。
八ッ橋とは?
八ッ橋についてもう少し詳しく紹介していきますね。
八ッ橋は米粉に砂糖、ニッキなどを加えた生地を焼き上げたお菓子です。
一般的には丸みを帯びた琴のような形をしています。
さっきも紹介しましたが、聖護院八ッ橋総本店や井筒八ッ橋本舗では琴の名手・八橋検校を偲んで琴の形をしています。
本家西尾八ッ橋の八ッ橋も同じような形ですが、これは携行食として持ち運んでも割れにくいように丸みを帯びた形になりました。
また西尾為忠商店の八ッ橋はまっすぐな板のような形です。
西尾為忠商店は京都ではたった3軒しかお店がなくて、店頭で1枚ずつ手焼きしています。
お店によっては八ッ橋の表面にイラストが描かれるものもあるんですよ。
聖護院八ッ橋総本店の八ッ橋は季節によっていろんな絵柄が入ったものが販売されています。
2020年の新型コロナウイルス蔓延時には、厄除けの意味も込めて「アマビエ」の絵柄が入った八ッ橋も販売されました。
これは京栄堂の八ッ橋ですが、「地下鉄に乗るっ」のキャラクターが描かれた八ッ橋も販売されたんです。
本家西尾八ッ橋ではちょっとおめでたい金箔入りの八ッ橋「おひろめ」もあります。
八ッ橋の種類で突出しているのは聖護院八ッ橋総本店ですね。
定番のニッキ以外にも、生姜や珈琲などの珍しい味がたくさん揃ってます。
聖護院八ッ橋総本店はnikinikiというブランドを立ち上げて、おしゃれな八ッ橋も展開しているんです。
これは薄い八ッ橋を細かく砕いたものとドライフルーツを合わせた、ヤツハシシリアルです。
ミルクをかけて食べるととってもおいしいですよ。
八ッ橋の新しい可能性を感じさせてくれました。
生八ッ橋とは?
生八ッ橋はその名の通り「生」の八ッ橋です。
八ッ橋と聞いてイメージするのは、この生八ッ橋の方が多いんじゃないかな。
だいたいがこんな三角のお菓子です。
厳密にいうとこれは「あんいり生八ッ橋」といいます。
生八ッ橋はあんを包んでいる皮のこと。
「生八ッ橋」という名前で販売されているのは基本的には皮だけのものですよ。
あんを包んでいないので、たっぷり食べられるのが魅力ですね。
生八ッ橋の基本の味はニッキと抹茶。
それ以外にも桜や黒糖、ゴマなんかがあります。
生八ッ橋(皮)について詳しくはこちらで詳しく紹介しているので、興味あれば見てくださいね。
あんが入った生八ッ橋は本当に種類が豊富です。
昔はニッキや抹茶などの定番の味しかありませんでしたが、今では数え切れないほどいろんな種類の生八ッ橋が店頭に並んでいます。
季節によっていろんな味が登場するので、一年中楽しめるんです。
季節ごとの生八ッ橋をほんの一部ですがいくつか挙げてみますね。
同じ味でもお店によって味は全然違います。
たとえばチョコレートの生八ッ橋を例にすると、「純粋なチョコレート」と「チョコレート入りこしあん」を使ったものがあるんです。
これは珍しいルビーカカオから作られた「ルビーショコラのおたべ」です。
鮮やかなピンクのチョコレートは口の中でゆっくりと溶けていきます。
一方こちらは「あんなま(チョコレート)」。
こしあんにチョコレートを混ぜたものが入っています。
滑らかさは純粋なチョコレートを包んだ生八ッ橋にはかないませんが、こしあんの食感がしっかりと楽しめます。
ちょっと不思議なチョコレート味のこしあんですよ。
ここからはちょっと珍しい生八ッ橋も紹介しますね。
まずは西尾為忠商店の生八ッ橋から。
西尾為忠商店は京都では3店舗しかお店がありません。
注文を受けてから手作りしてくれるのが最大の特徴です。
生八ッ橋は真っ白。そしてその形がとても目を引くんですよね。
なんと四角い生八ッ橋なんです。
恐らく四角い生八ッ橋はこのお店だけだと思います。
さらに斬新な生八ッ橋を紹介しますよ。
さっき紹介した聖護院八ッ橋総本店の手がける新しいブランド nikinikiからはこれまでのイメージを覆す生八ッ橋が登場です。
あまりにもかわいくて食べるのがもったいない。
そんなカラフルでかわいい生八ッ橋がこちら!
鮮やかな色の生八ッ橋で作られたnikinikiの生八ッ橋は、三角のイメージしかなかった生八ッ橋のイメージを思いきり壊してしまいました。
かわいい動物や人形、ハートなど芸術品のような生八ッ橋なんです。
あまりにもかわいくて食べずにずっと眺めていたいくらい。
いろんな生八ッ橋についてを知りたいなら、こちらのページで詳しく紹介しています。